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執筆者の写真笠置町 恵那市

【岐阜県恵那市笠置町 里山から始まる持続可能な未来】高野雅夫先生 

更新日:2021年10月17日

移住定住委員会アドバイザーの高野先生に笠置町のこれからのことをお聞きしました。



  高野 雅夫 先生

【プロフィール】笠置町移住定住委員会アドバイザー
名古屋大学環境学研究科教授 飯地町在住



Q.笠置町の現状と将来展望についてどうお考えですか?

A.過疎が進んでいますが、希望を感じます。


 笠置町も他の過疎地域と同様、もう半世紀以上も人口減少が続いています。今では人口が最も多い年代は70代前半で、20代後半の人はその4 分の1もいません。子どもの数も減り続けています。


このまま何もしなければ子どもが一人もいなくなり、その先には人口がゼロになる、つまり笠置町は無人の地になる勢いで推移しています。 

でも人口の将来推計によれば、年間3世帯の子育て世代(独身の人を含む)の家族が笠置町に移住してくれば、子どもの数が減らなくなり、将来も持続する町になります。



 


そのために笠置町移住定住委員会が様々な取り組みを行っており実際に移住者が来るようになりました。大いに希望を感じます。




Q.移住定住委員会ではどのような取り組みが行われているのですか?

A.空き家活用の働きかけと、空き家と定住希望者のマッチング。


笠置町内には空き家がたくさんありますが、普通は空き家の家主さんは人に貸したり売ったりということを考えないので、委員の皆さんが手分けして家主さんに連絡を取り、活用してもらえるようお願いする活動をしています。__


Q.空き家が増えていますが、個人の財産ですので、周囲がどうこう言えないのでは?

A. 実は家主さんは困っていることが多く、それをいっしょに解決してあげるということです。


 家主さんが空き家をそのままにするのは大抵の場合、どうしてよいかわからず途方に暮れているという事情があります。片付けるのも大変。修理でも解体でもお金がかかる。それでにっちもさっちもいかず放置されていることが多いです。一方で固定資産税や、草刈りなどの管理で、家主さんにとって「お荷物」のことが多いです。

移住定住委員会では、そういう家主さんのお困りごとを丁寧に聞き取り、その解決策を一緒に考えることで活用に結びつけようとしています。片付けや家の修理に使える補助金もあります。家賃を安くし、借りた人が自分で修理するということもできます。


住んでいる人がいれば、日常の手入れや草刈りはやってくれ、多少なりとも家賃収入があります。将来は売れるかもしれません。空き家を活用することは家主さんにとってもメリットが大きいので、そこを理解してもらうよう努力しています。



Q.笠置に移住してこようという人が実際にいるのでしょうか?

A.います。ここ二年で5世帯移住してきました。


若い人たちの意識は確実に変わってきていて、都会で忙しく暮らすより自然の中でゆったりと子育てや自分がやりたいことを追求したい人が増えています。政府の調査によれば、20代・30代で具体的に田舎への移住を考えている人は全体の4〜5%います。そういう人たちは全国に移住先を探しています。



令和元年度の移住者 4世帯の集合写真


実際、移住定住委員会が本格的に活動を開始してから2年ですが、その成果として5世帯が笠置町に移住されました。串原地区や豊田市の旭地区では移住者が多く、小学生の数が増えるという状況です。そういう身近な事例にも学びながら取り組んでゆくと良いと思います。


Q.笠置には仕事がないので移住してきても困るのではないでしょうか?

A.仕事はたくさんあります。


 田舎には仕事がないという先入観がありますが、冷静に考えてみると、地元の事業所はどこも人手不足で困っています。就職口はたくさんあります。また、移住してくる人は自分がやりたい仕事を実現するためにやってきます。実際、笠置に移住してきた人は、自分の事業を展開して自営業を営んでいる人が多いです。地域の中にある小さな仕事を請け負いながら、自分のやりたいことを事業として育てていく姿があります。ぜひ応援してあげてください。



Q.移住してきた人に自治会への加入をすすめてもよいのでしょうか?

A.ぜひすすめてください。


最近移住してくる若い人たちは、田舎の近所づきあいや地域のつきあいに魅力を感じてくる人がほとんどです。都会ではそういうつながりがまったくと言っていいほどなく、困った時にも助けてもらえないし、つまらないと感じています。ぜひ自治会への加入を勧めて、地域の一員として迎えいれてあげてください。ただし、自治会費の額が高いことや地域の草刈りやお祭りのことなど、わからないことだらけですので、丁寧に説明してあげてください。



Q.移住してきた人がうまく地域に溶け込んでくれるか心配です。

A.最初にボタンを掛け違えないことが大事です。


I(アイ)ターンで移住する人は地域のことを何も知らないので、実際に来てみて思い描いていたものと違うとなると、移住した方も地元も不幸です。移住を決める前段階で対話をし、双方の思いを共有してから決めてもらうことが大切です。


移住定住委員会では移住希望者に空き家を紹介したら、地域との「お見合い」としてコミュニケーションの場を設定しています。ただ、移住してくる人は地元の人とは価値観が違う面はあります。互いの価値観を尊重しつつ、あるところから先は、お互いに踏み込まず仲良く暮らすよう、双方の努力が大切です。




Q. 地元の若い人は出て行って帰ってこないことが多いのですが、帰ってくるようにできるのでしょうか?

A.適切な働きかけがあれば帰ってくる人はいます。


地元出身の若い人たちの多くは、別に笠置が嫌いで出て行っているわけではなく、進学し、都会で就職して、そのまま地元を離れている人が多いと思います。彼らの中には、地元に帰るのも悪くないかなと思っている人もいます。


実際そうやってUターンしてきた人もいます。ぜひ声をかけてみてください。ただ、地元に帰ると地域の活動の負担が若い世代に集中するからと、二の足を踏む人もいます。この問題は地域全体で考えていかなければならない課題ですね。


Q.先生も飯地町に移住されたと聞きましたが、住み心地はどうですか?

A.とても楽しく暮らしています。


 移住定住の学習会の講師で呼ばれたご縁で、飯地町に移住しました。ミイラとりがミイラになったということですね(笑)。古民家を買って改修して暮らしています。宅地と家だけあればよかったのですが、自動的に農地と山も付いてきました。もうずいぶん放置されて荒れてしまっています。


私たちだけではなんともできないので、都会から里山の暮らしを体験してみたいという若い人たちに来てもらって、一緒に草刈りをしたり、木を間伐してそれで小屋を作ったりという活動をしています。



     「里山の暮らしを体験」でカヤを刈って草泊りを作った様子



地元の自治会にも入り、色々なまちづくりのグループにも参加して楽しくやっています。飯地町にはメガソーラーの開発問題があり、これに町をあげて反対していますので、そのために一住民として、また専門家としても貢献しています。


Q. これからの笠置町にとって一番大事なことは何でしょうか?

A.あきらめないことです。


移住定住委員会の取り組みによって笠置町に移住者が来るようになりました。地域の将来をあきらめる必要はありません。今は移住ブームとも呼ばれていて、移住したい人(Uターンしたい人も含めて)は都会にたくさんいます。


ただ受け入れ側がまちぐるみでこれに取り組まなくては移住者はやってきません。移住定住委員会が強力にサポートしますので、ぜひ各自治会が主体的に動いて、空き家の活用や移住者の受け入れを進めてほしいと思います。そうすれば子どもの声があふれる笠置町も夢ではありません。


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